齢二十二にして叔父さんと呼ばれ。

お出かけ。

夏目坂を上りきった辺りに住む実姉に
「遊びに来い」
と誘われたので、
1歳半になる甥の顔でもみてやろうと
訪ねていった。
義兄さんは夜勤が多い。
ともすれば子育てで手一杯になり、
姉は一日誰とも会わないこともあろうし、
まだ幼い腕白な甥の面倒を一人で看るのは
大変であろうから、
これも一つの姉弟孝行と言えなくもない。

訪ねてみると玄関まで甥がよちよちと
迎えに出てきた。
以前は訊ねる度に顔を忘れられているようだったが、
最近はさすがに
「よく遊びに来る人」
位には認識されているようで、
いないいないばあなどをせがまれる。

そのうちに姉が台所で家事をしだした。
その間居間で甥に高い高いをしてやっていたら、
勝っても知らぬ他人の家、
甥の頭を電灯の傘にしたたかぶつけてしまった。
目に見えてぐずりそうになる甥を、
台所の姉に気付かれぬよう必死であやす。
その場は何とか取り繕ったが、
後で姉が甥の頭にたんこぶでも見つけたら、
それは私のせいである。

甥に離乳食を食べさせた後、
乳母車に甥を乗せて三人で散歩に出た。
夏目坂を下り、早稲田大学構内の
演劇博物館前の広場でひとしきり甥を遊ばせた後、
地蔵通り商店街に向かおうかという段になって
ひどく強い雨が降り出した。
さすがに散歩を中断せざるを得なくなり、
姉と甥が帰るのを見送った後、
私も都電に乗り、家路に着いた。
また姉の家には近く顔を出そうと思う。

祝いの品。

姉の家を訪ねた際、姉から遅ればせながら
大学院入学の祝いの品をいただいた。
青の柄織りの上品なネクタイである。
Brooks Brothersという、
洒落た紳士服ブランドの品だそうだ。
残念なことに私はそのブランドに関して
無知であったが、そんなことに関係なく
私はそのネクタイを気に入った。
以前に義兄さんのお母様から頂いた生地で誂えた
ワイシャツがあるので、
いつか姉一家と会食をする機会でもあれば、
背広にその組み合わせで謝意を示したいと思う。